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シンガポール経済市場レクチャー

2017年9月11日(月)
JETROシンガポール事務所において、竹内正樹氏、関泰二氏に概要と美容市場についてレクチャーを受けた。

シンガポールの一般概況

シンガポールは、人口:560万人(東京23区930万人)、国土:710km²(東京23区619km²、日本の淡路島とほぼ同じ位の大きさ)という小さな国であり、少子高齢化も進む国ながら、フライト6時間以内に30億人(ASEAN、インド、中国)、3時間以内には6億人が活動する“東南アジアほぼ全ての首都に移動できる立地と、地震や台風による天災被害も心配無いと言う地理的メリットを有する。
人種的には中華系とマレー系で大半を占めその他はインド系などさまざま。 公用語は英語と中国語の二種。異文化・多民族の縮図であり、「違い:イレギュラー」を受け入れ尊重している柔軟性がある。

2015年で独立50周年。国としての資源が少ない現実を直視し早い段階でアジアの“ハブ国家”としての転換を図り、バイリンガルなデータセンターや、物流、ネットインフラ、税制、金融、そして観光など東南アジアのゲートウェイとして、シンガポールに人・モノ・金・情報を集約し極めて特徴的なグローバル国家としてその存在価値を大きく見出し発展している。

シンガポールにおける理美容市場について

シンガポールのヘアサロン市場規模は約2,230億円と日本の約12分の1。理美容を中心としたヘアサービスと、ビューティー、エステ、脱毛、ネイル、マッサージなどを総合的に行う美容サービスの2つに分かれており、大半はユニセックスで理容と美容の区別は少ない。また、サービス価格に関しても大手の低価格店舗から、独立系の高価格店舗まで幅が広い。
ローカル企業だけではなく、日系や韓国系などの外国系チェーン店も多いが、他のアジア諸国同様、韓国系の伸長躍進が目立つ。
一例として「QB HOUSE」を始めとして「SNIP AVENUE」「EC HOUSE」「KCUTS10」「JEANYIP」などがあり、総合的なサービスや低価格路線などで活動している。

美容師の国家資格が無いだけではなく、ヘアサロン開業時の事業所申請も不要、その為に前述の企業サロンだけでなく、個人経営やフリーランスによるビジネスも多い。更に「外資系企業への規制」が少ない事も参入障壁を大きく下げ競争は大変激しくなっている。

結果として、シンガポールの理美容市場は、全体としてサロン総軒数は5,419店(2013年)~5771店(2015年)と増加しているものの、1店舗あたりの売上高、利益はゆるやかな下降傾向にある。また、消費動向では、消費者の年齢的な支出差は少ないが、所得別ではその支出に大きな隔たりがある。 ヘアサロンの場合「高価格サロン」、「低価格サロン」間のカット価格差は3~4倍、トリートメントのメニュー価格に至っては日本に比較するとその施術の割合や価格が極端に高い。これは文化的差異も大きいが、高所得層がサロン内での付加価値サービスへの期待が多い結果である事が伺えた。

シンガポールサロンにおけるPRや集客について

タブロイドなど紙による広告媒体は有るものの数も少なく、特に外国人、日本人対象のものは少ない。コミュニケーションに関してはSNS等の活用がシンガポールでも主流になりつつあり、日本と同様にスタイルやモデルの公開から始まり、最終的にはスマホからのネット予約までの一気通貫の動員手法の活用が、今後のシンガポールでのサロン市場の活性化を大きく左右すると予想される。

レクチャーをうけての感想

日本ブランドの認知度は高く、まつエクやネイルも流行している中で、その技術力の高さも理解されている。しかし日系サロンであっても日本製品の使用率は低い。これは、クールジャパンをはじめとする、日本の国家としてのブランドの売り込み戦略の弱さ、情報量の少なさに加え、日本のメーカーが日本での成功事例や製品、技術にこだわるあまり顧客ニーズへの応用力、柔軟性の欠如が起因しているようであり、これらは(シンガポールだけでなく)、ASEAN始め、アジアの美容市場の獲得競争で日本に大きく差を付けている韓国との大きな差異だと改めて感じた。

これらを払拭しアジアで日本の美容を広く派生させる為には、モノやサービスと並行してリアルな情報元としての、「流通業」と「IT」の拡大、そして顧客志向の徹底、アジアで売れるモノや仕組みづくりを意識したメーカーの取組姿勢がなお一層重要視されてくるであろう。 シンガポールは今、空前の健康ブーム、美白ブーム、痩身ブームである。日本が先んじている分野はまだまだあると思うので、官民一体となった対外政策で美容文化をアジア中に広め、活用してもらう事が、強いては停滞ムードの続く国内の美容市場にきっかけや気づきをもたらし、活性化に繋がるのではないかとの期待を感じた。

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